歳とともに身体のあちこちにガタがきている。特に慢性的な腰痛に悩まされていて、痛みがひどくて整形外科に通ったことがあった。診察受けてリハビリしましょうって医者に言われて、リハビリ?なんだぁ??と思ってたら、要はマッサージ。理学療法士の人に腰回りをモミモミされた。その病院のリハビリルームというのが広くて、ワンフロアにモミモミ用のベッドが8床ぐらいあった。僕の隣りのベッドでは30代半ばと思しきお父さんが、モミモミされながら療法士に家族のことをいろいろ喋っていた。ベッドとベッドの間隔が狭いので会話が耳に入ってきた。どうやらお父さん、次の日曜日に子どもを映画館に連れていく約束をさせられたようだ。そこでお父さんからこんな一言が飛び出した。 「わざわざ映画館行かんなんがいぜ。面倒臭いちゃのう」 なるほどなぁー。少し我慢すればそのうちにレンタルショップで安く借りられるれし、配信サービスに加入してればもっと手軽に気楽に観ることだってできるもんなぁ。(レンタルや配信サービスで観ることが映画を観るということなのかどうかはとりあえず置いといて)決められた上映時間に合わせてその場所まで行かなきゃダメって、お父さんにとって映画館はわざわざ行かなきゃならない面倒臭い場所ってことのようだった。映画好きとしては、ちょっとちょっとお父さん!とは思うけど、映画に興味がない人だっているんだし、面倒臭いって言うのも全然あり。ただ、多様なエンタテイメントが混在する時代にあって、映画を観るのが好きって人でもそんな風に思うようになっている人が増えてきているんだろうなぁとは感じている。
今回の無声映画上映会でお世話になる「ほとり座」は、その以前は「フォルツァ総曲輪」という劇場だった。そこで僕はスタッフとして仕事をしていたのだが、その時の女性と高校生の息子さんの話しだ。二人はともに常連で、一緒に来ることもあれば別々に興味のある作品を観に来ることもあった。ある時、上映作品に併せて監督の舞台挨拶があった。ロビーには女性の顔があったのだが息子さんの顔が見えなかった。そのことを僕が尋ねると女性は少し残念そうに、「息子も誘ったんだけど明日テストがあるから家で勉強するんですって。教科書のことなんてそのうちに忘れてしまうけど、映画館で観た映画のことは一生忘れないと思うんだけどね・・・」と言った。女性にとって映画館がわざわざ行く特別な場所であったことが劇場側の者としてとても嬉しかった。ひとりでも多くの人に映画館で映画を観る面白さを知ってもらいたいと思った。
病院のリハビリルームで出会ったお父さんは約束通りに子どもを映画を観に連れて行ってあげたんだろうか?多分小学生ぐらいの子どもなんだろうな?子どもは日曜日を楽しみにしてたと思うんだよね。そしてキラキラ目を輝かせて大きなスクリーンにかじりついていたはずだ。子どもはあの日あの映画館で観たあの映画のことはずっと覚えていると思うよ。お父さん、わざわざ行くの面倒臭かっただろうけどいい仕事したよ!グッジョブ!!
”わざわざ”映画館で映画を観ることが、面倒臭いじゃなくてやっぱ面白いなぁという”わざわざ”であってほしいし、その”わざわざ”を共有したいし提案したいと思った。
そして「不識俱楽部」を立ち上げた。
6月3日(土)、4日(日)の2日間に渡って「カツベンをとことん楽しむ2days」と題した無声映画上映会を企画した。詳細はHPのイベント情報を。そしてご予約お待ちしています。わざわざ行ってよかったちゃー!そんな2日間です。